もうすぐ、クリスマスではなく、・・12月14日は“忠臣蔵 討ち入りの日”である。
今は昔、1999年1月10日(平成11年)からNHK大河ドラマ「元禄繚乱」という放送が始まった。今年は2019年(令和元年)であるから、すでに20年も前の放送となってしまった。ドラマの主人公は大石内蔵助、演じたのは当時の中村勘九郎。歌舞伎役者が演じるものといえば、歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」である。歌舞伎では刃傷事件が発端となって大星由良之助義金が四十七士を率いて高 武蔵守師直(こうのもろのう)邸へ討ち入りを果たし、切腹するまでの2年間を描いた物語である。NHKでは「忠臣蔵」についての大河ドラマを計4回放映したことになる。1964年「赤穂浪士」、1975年「元禄太平記」、1982年「峠の群像」である。浅野内匠頭の刃傷事件が起こらなければ、内蔵助は“昼あんどん”のあだ名のまま、平凡な人生を終えていただろうと思われる。その事件をきっかけにして同のように変わっていくのか、人の成長を描くことがドラマになると言える。先般12月1日に行われた“第25回 大田区日本語でスピーチ”では、大田区在住の外国に繋がる方々がそれぞれのテーマに沿って、日本語で発表を行った。本人はもちろん緊張をするのであるが、その方々の日本語学習を支援した先生方の緊張と感激が場内を包んでいた。発表会直前まで会場の隅で練習を繰り返していた人や支援者の様子が思い起こされる。準備万端という言葉は、かなりの重圧になるのである。準備周到で発表会に臨むのは、いまだ日本語に堪能ではない彼らにとっては、言葉では言い尽くせないほどの経験をするのである。会場内で偶然に出会った知人は「わたしも発表者」と告げてきた。最先端の電子技術開発者をめざして大学に通う彼女のあだ名は「昼あんどん」。暗くならないと見えないような性格だが、なくてはならない存在だ。彼女の発表を聞いていながら、ふと12月14日の忠臣蔵の討ち入りと大石内蔵助のあだ名を思い起こした。降壇後の第一声は「日本での思い出、今日のこと 生涯 忘れない!」であった。今の日本人から聞くことの少なくなった言葉のひとつ “生涯” ということだった。おそらく“一生涯”といったのだろう。歌舞伎に熱中する彼女のなかでの忠臣蔵の主人公は「将軍・徳川綱吉と柳沢出羽守吉保」なのである。つまり大石や吉良ではない。“ところ変われば品変わる”のたとえもあるが、お国が変われば主役も変わる。この発表会がなければ彼女も平凡な人生だったかもしれない。「外国製の昼あんどん」が大いに燃え盛ってくれれば、それでいいのだと納得しつつ「日本語でスピーチ」を楽しんだのである。
(Wataru君)
2019
20Dec