言語を学ぶには、4技能「聞く、話す、読む、書く」の習得が望ましいという考えが広く一般的です。
母語を習得する順序はどうかというと、まず「聞く」がスタート。
赤ちゃんを思い浮かべてみると分かりますが、周囲の人の話し声などをひたすら聞き、ある時間が過ぎると「話す」ようになります。
その後、成長とともに「読む・書く」を習得していきます。
次に第二言語を習得しようとした場合ですが、この場合「聞く・読む」がスタートで、次に「話す・書く」を取り入れるのが望ましいとされています。
母語と違い、聞くだけではなく読むことを同時に進めることによって効率よく言語の音に慣れていきます。
自分の声で身体に言語を響かせるのが特に良いとされていますが、確かに五感が活躍する部位は増えますね。
ですので音読は大変良い練習になりますが、これを宿題としてもなかなかやってくれません。
悩ましいです。
続いて、文字を目で追うことがない「話す」を行うことによりそれまでの総合性が増していきます。
もちろん初級の生徒は話すのは難しいですから、教師の言葉を聞き取って真似て話してもらいます。
繰り返し行うことで、母語とは違う言語を耳が捉える力が養われていきます。
「ひらがな・カタカナは書けます」といってやってくる生徒にも「書く」指導以前に「読む」を行い、正しい音の出し方を指導した上で、「書く」指導へ移行していきます。
文字の形と音を同時に入れることを目的としています。
私たちが生徒に接する時、気になることの一つに母語の確立があります。
基盤となる母語の習得がどの程度なのかによって、第二言語としての日本語の定着がかなり変わってきます。
母語で考えることができた経験によって別言語の理解が深まりますし、習得上位者となった時に言語スイッチが切り替わりやすくなるとも言われています。
グローバル化が進み、家族の形も多様化しています。
子どもを取り巻く言語環境も様々でしょう。
時々生徒から
「もっと幼い時に日本語を勉強すればよかった」
とか
「もう母国には戻らないんだから母語を学ぶ必要ない」
という声があがります。
いいえ、言語とはそうしたものではないんです。
あなたが日本語を習得できるのは、母語に寄ることが多いんです。
母語で物事をしっかり考えられてこそなんです。
本人が望まない中、無理やり入れられる言語は母語に本来の役割を与えない程の影響力があります。
それにより自分のアイデンティティを見失ってしまい苦しむ人もいます。
多文化の中で生きていくには、母語と他言語のバランスを図りながら進めていく必要があるのです。
例えば、学校や社会では日本語を使いつつ、家族や同郷の友人とは母語を使うなど。
その人が心に苦痛を感じないスタイルで言語は習得していくのが望ましいと思われます。
日本語を学ぶというより、私は楽しんで欲しいと思っています。
(E.F)