新聞の悩み相談記事に、保育園の園児の母親からこんな相談が寄せられたことがありました。
「保育園の保育士から『お母さん』と呼ばれたくない」
なるほどー。園児のお母さんならまだ若く、自分と同年代か年上の保育士から『お母さん』と呼ばれるのは抵抗があるのでしょう。その記事の回答には
「では何と呼べば良いのでしょうね?日本語で相手を指す言葉は『あなた』ですが、これは最も使われない日本語のひとつでしょう」
この回答にもなるほどーー。
確かに『あなた』はあまり使われないかも。特に目上の人に向かって『あなた』はなんとなく失礼な感じがするので、多少でも気を使う相手に『あなた』とは言わない気がします。
英語を習い始めた頃、相手が誰であってもYouと呼ぶこと、同一人物を指す場合は名前を繰り返さず『彼』や『彼女』のような代名詞を使うことに驚きました。
私の場合は、たとえばAさんと話す時、
「Aさんはあの本、もう読みました?」
Aさんがいない場面で
「Aさんはあの本、もう読んだそうですよ。私はAさんから借りて読むことにしました」
というふうに、話し相手がAさんであってもなくてもAさんのことを『Aさん』と言っています。
しかし、『B先生』の場合は
「B先生はあの本、もうお読みになりましたか?」
「B先生はあの本、もう読まれたそうですよ。私はB先生からお借りして読むことにしました」
ということもあるし、B先生を指していることが明らかな場合は
「先生はあの本、…」
のように『先生』を呼び掛けや代名詞代わりに使うこともあります。
相談に登場する保育士さんも、
「○○ちゃんのお母さんは…」
というところを『お母さん』と省略して呼び掛けに使ったんじゃないかなあ、と想像します。呼び掛けた相手が気分を害するかもしれないなら、気をつけなければいけないですね。私は大丈夫かしら。
ところで、日本語では『あなた』に当たる言葉として他に
君、お前、あんた、貴様、貴殿、そち、そなた、そのほう、お前さん、あんさん、おたく
等々(時代劇、落語を含む)…。それぞれ印象が違うし、使う場面も違いますが、その“違い”を説明するのは結構難しい…。
また、自分を指す言葉も
私(わたし・わたくし)、僕、俺、おいら、わし、拙者、我、我輩、あたし、あたい、あっし、手前、余、わい、おい
等々(方言も含む)…。どうしてこんなにあるんだろう…。
(SI)