ぐるりっとは約20年活動をしてきました。
お蔭さまで、多くの経験を積み重ねて、知的/人的・物的資源の蓄積とそれらのまとまりである素晴らしい組織が形成されてきました。
組織形成の大きな役割を果たすのがチームワークです。
ぐるりっとは、メンバーが役割を分担して主体的にかかわり、最終的にチームとして一つの成果にまとめ上げるのを得意としています。地道に確かな蓄積ができてきていると思います。(短所としては、大胆な発想や行動は護身の殻に留まりがちになることでしょうか)
このように、今年度も私達は万全の構えで取り組む準備ができていました。
ところが、難題がやってきました。
「通室の壁」とでもいったらよいでしょうか。こどもがぐるりっとに通うことが、以前にも増して難しい状況にあることを意識せざるを得ない場面が増えてきたのです。
何しろ、ぐるりっとの生徒の数が4月以降、極端に減っているのですから。
背景には、ぐるりっと以外の教室や学校での日本語指導時間数が増えてきていることもあるかと思います。
放課後や土曜・日曜に開いている教室には、日本語の支援を必要とする子どもの数が増えているということをよく耳にしますし、同じ「おおたこども日本語教室」でも蒲田教室の方は安定したこどもの数が得られている状況もあるようです。
生徒数の増減の要因としては、まず教室の立地条件があるでしょう。
ぐるりっとの教室は駅から遠く、最寄り駅の大森はJR1本だけ。三本の路線が入っている蒲田に比べたいへん不便なアクセス条件です。
ふたつ目は、時間帯です。
9時から12時の「おおたこども日本語教室」はさて置き、午前中10時から12時、午後14時から16時という時間は、そもそも学校がある時間帯で通室時の安全性の確保も必要なことから、関係者が「確固たる認識」を共有しないと、通うことは難しいという難点があります。
「ぐるりっとは時間帯を変えればいいじゃない!」と多くの人は思われるかもしれません。
(さて、ここからが本題です。)
私達が何故学校のある時間帯に拘っているのか…、ひとことで言うなら「教育のインフラ」の部分だからです。
「教育を受ける言語=日本語」は学校に通学する前に、あるいは通学後でも、できるだけ早い段階に速やかに保障すべきで、放課後や休日ではありえないと思うからです。
この考えに理解・協力をしてくださる保護者や学校関係者も多く、これまで実施することができていました。大きな成果もたくさん見てきました。
ところが、放課後や休日に受け入れる教室が増え(もちろん教室はニーズがあるから受け入れているのですが)、断片的な日本語指導の時間が増える状況を知るにつけ、返って「教育のインフラ整備」は遠のき、ぐるりっと教室のコンセプトも消滅の途をたどるかもしれないという危機感を覚えるようになってきました。
どんな誇るべき(?)支援体制も、生徒が来なければ役にたちません。
今年のぐるりっとの課題は、潜在的な生徒の確保とともに、「教育のインフラ整備」としての「共通認識」を確固たるものにし今ある資源をもっと活用していくための’はたらきかけ’でしょうか。
(tpn)