私は子供の頃から絵本が好きで、今も時々古本屋さんで見ています。
教材として使えればなお良し、という気持ちもあるので、言葉遣いや内容も気になります。
最近出会った本に、懐かしい感覚が呼び覚まされ、そして大爆笑したので紹介します。
くもん出版 子どもとよむ日本の昔ばなし「したきりすずめ」
再話:小澤俊夫/小野佳子 絵:平きょうこ
皆様ご存知の昔話ですが、昔話や民話と言われるお話はしばしば色々なバージョンがあります。地方によって、あるいは時代によって変わっていったのだろうと思います。この「したきりすずめ」も、どんな話だったかな、見てみようと手に取りました。
家に帰って読み、あまりの面白さに大笑いしました。そうそう、この面白さ。奇想天外。予想外の展開。常識はひとまず置いておいて、面白さを追求しました、という感じ。勧善懲悪でもなく、因果応報でもない。いうなれば不条理、ですが、そうだった、これこそ真理だった。世の中は不条理が溢れているのだった、と気付かせてくれました。
ここで「気付き」などと言ってしまうのは、私が一応大人だからなのであって、本来お話は純粋に楽しめばよいのではないかと思えてきます。
主な登場人物を、私の感想を交えて紹介します。
じい。普通の働き者。昔は多くの人が働き者でした。そして、この本のおじいさんは人が良過ぎ。雀に弁当を食べられても、その可愛さにメロメロ。
雀。食いしん坊でちゃっかり者。おじいさんの弁当を食べてしまうし、おばあさんに番を頼まれた糊も食べてしまう。いいつけは守らないし、嘘はつくし、おばあさんにあからさまな意地悪をする。
ばあ。雀がいいつけを守らず、嘘もついたので腹を立て、その舌を切って追い出してしまう。舌を切るのは驚くべき残酷さだが、腹を立てたことには道理がある。
さて、おじいさんは雀を捜し尋ねて行きますが、道中訳もなくひどい仕打ち(と私には思える)を受けても憤りもせずニコニコしています。(何故?!)
おばあさんは欲張りとして描かれていますが、悪人というほどではなく、俗人で、欲に素直な姿には、なにやら親しみを感じてしまいます。
雀は舌を切られた恨みを晴らすが如く、おばあさんに意地悪をし、重いつづらから出てきた蛇や蝮はおばあさんを殺してしまいます。
実はこの本を読み始めた時、標準語の平易な文章に、教材として使えるかも、と思いました。しかし読み返すたび、おじいさんのほのぼのぶりや雀の意地悪、おばあさんの欲張りっぷりが可笑しくて可笑しくて、笑いが止まりません。教材として使うことは不可能と、諦めました。
(SI)