ある朝のこと、飼い猫たちがリビングの窓辺に走ってきてしきりに外を気にしている。
我が家の庭先の細い植え込みは近所の猫たちの通り道になっている。だから我が家の猫たちもおなじみさんには慣れていてそうそう興奮しないのに。新入りでもやってきたのか。
夫と二人で見ていると、来た来た、やはり見慣れない毛色の猫だ。
「おい!」と声をかけると足を止めてこちらを見た。「ん?」猫じゃない。「ねえ、これ、タヌキだよね」と夫に聞く。数秒間、ガラスを隔てて互いに見つめあっていたけれど、我に返った狸は通り過ぎて行った。
面白い話題に欠けるこの頃、さっそくSNSにアップした。意外なことに東京在住者は「へえ、その辺にもいるんだ」程度の驚きで、台湾や香港からは「うそでしょ」、「狸ってアニメの中のものでしょう」と驚き加減が違っていた。
我らがぐるりっとの生徒たちにもLINEで「狸話題」を振ったら即座に「怖い」と返ってきた。日本人の私たちには狸はどこか間抜けでユーモラスな『タンタン狸さん』なんだけどなあ。
狸さんのLINEやり取りで図らずもわかってしまったことがある。単純な話し言葉が正しく表記できていないのだ。「ああ、そうか」→「ああ、そうが」、「わからない」→「わかない」、「わかった」→「わかた」、「しっぽ」→「いっぽ」などなど。(残念!ちょっと違った)
いずれも単語として学習しておらず耳で得た言葉なのだろう。LINEでのおしゃべりにも意味があるものだ。たまには会話も文字化することもしてみようと思った。
(トンボ)