唱歌「ふるさと」の歌詞を思い違いして歌っていた人は少なからずおられるだろう。「うさぎ おいし かのやま」、恥ずかしながら幼い私は「うさぎ おいしい あの山」と堂々と歌っていた。「いかにいます ちちはは」を「イカをにます ちちはは」と続けていた。なんと、食い意地の張った子供だったか。
そういえば、まだある。「ずいずいずっころばしゴマみそずい」と手遊びをしながら最後まで「井戸の周りでお茶碗かいたのだあれ」と。ところが、ある時、テレビの子供番組で絵をかぶせて(今で言うアニメ化)その歌を歌っているのを見た。そして、分かったのだ。「お茶碗描いたのだあれ」じゃなかったと。幼い私はこっそりと恥じた。
そんなことを友だちに話したら、「それ、あるあるだよね」と。「アルプス一万尺 おやまのうえで ルンペン踊りを踊りましょう」と歌っていたというのだ。「こやり」なんて幼い子供がわかるはずもない。なのに、なぜ「ルンペン」なんて知っていたのか。実は私も「ルンペン」は知っていた。アルペンも知らない子供がどうしてルンペンを知っているの??謎だ。
今では立派なおじさんになった友人の息子さんは野球少年だった。まだ頬が丸かった彼が「ママ、コンダーラってそんなに重いの?」と聞いたそうだ。「ン?コンダーラ???」そこで彼は、スポ根の金字塔である『巨人の星』の主題歌を歌った。「重いコンダーラ 試練の道を 行くが男の~♪」彼の脳裏ではいかにも重そうなもの(実はテニスコートを整備するローラー)を星飛雄馬が苦痛をにじませて引いている。そうか、そうか、あの頃の君は「思い込む」なんて知らないよね。
今度、彼に会ったら歌ってやろうと私は意地悪く思った。
(トンボ)