新型コロナウィルスの流行をきっかけに、日本社会のデジタル化やキャッシュレス化の遅れが、
より一層意識されるようになりました。
一方、報道によると、中国では電子決済が当たり前。
インドでは生体認証を活用した身分証明システムが導入されているそうです。
このように新興国が先進国から遅れて新しい技術に追いつく際に、
途中の段階をすべて飛び越えて一気に最先端技術に到達することを
リープフロッグ(leapfrog)現象というそうです。
どうしてこの現象が起きるかについて、
情報社会が進み、外国の情報や技術の伝達が容易になった、
社会インフラや法制度が整っていないため制約が少ないなどと言われていますが、
一番の理由は「不便」ではないでしょうか。
読み書きができない、固定電話がない、銀行口座を持つことが一般的でない、
現金を持っていることがリスクになる、などなど、たくさんの不便があって、
それを克服したいという強い欲求が、人々が新しい技術を抵抗なく受け入れる原動力に
なるのではないですか。
ところで、日本語の教科書類には、ときどき古い道具が登場します。
教科書の改訂が技術革新に追いつくのは容易ではないでしょうから仕方ないことです。
私は今、中国出身の生徒を受け持っています。
少し前、練習問題の中に「缶切り」が出てきました。
ちょっと心配になって、知っているかどうか尋ねてみました。
すると「知っています。中国はみんなこれを使います」。
そうだよねえ。
とりあえず缶切りがあって、缶が開けられて中身が取り出せれば十分だよねえ。
第一、力が衰えたお年寄りにとって、缶切り要らずの日本の缶詰が本当に便利といえるか
どうかわからないし。
国が違っても缶切り不要の缶詰が主流だ、と考え違いをした自分のうかつさも含めて、
なんとも複雑な気持ちになりました。
(ecu)