生まれ育った日本を離れて海外で生活すると、「自分は日本人なのだ」という意識を強く持つことがある。そして「日本のことをよく知らない自分」に気づくこともある。
例えば、私はアメリカに住んでいた時、友人に「日本の首相が靖国神社に参拝することをどう思うか?」と尋ねられた。でも今までそのことを考えたこともなく、何と答えればよいかわからなかった。
海外にいると、日本で暮らしている時には思いを巡らすことがなかったことについて考え、自分のバックグラウンドである日本のことを見つめる機会が増えたように思う。
そのアメリカに住んでいた頃、私立小学校で日本語を教える機会をいただいた。
そこでは「World Language」という科目があり、生徒達は自分の学びたい言語を選択して授業を受けることができた。
私はそこで3年間日本語を教えていたが、生徒の一人にE君がいた。
E君はお父さんがアメリカ人、お母さんが日本人。生まれてから日本に住んだことがなかったので日本語の語彙力も乏しかった。
私が日本に帰国するのと同じタイミングでE君は中学生になり、その後は全く日本語を勉強する機会がなかったそうだ。
そして去年、彼のお母様からオンラインでレッスンをお願いしたいとご連絡をいただき、久しぶりに日本語を教えることになった。
画面に現れたE君は、声変わりをして大人っぽくなっていた。
なぜ今もう一度日本語を学びたいと思ったのか彼に尋ねると、「ボーディングスクール(寄宿制学校)に入って自分のアイデンティティについて考えるようになり、自分のバックグラウンドの日本語が中途半端なのが恥ずかしくなった。もっと日本を知るために夏休みには日本に行ってアルバイトかボランティアをしたい。」と語った。
「自分は一体何者なのか」というアイデンティティを確立するために、彼も自分のバックグラウンドをもっと知りたいという気持ちになったようだ。
「ぐるりっと」でもいろいろなバックグラウンドを持つ子供達が、日本の文化や価値観に影響を受けながら日々生活している。
自分のバックグラウンドに向き合いつつ、自分独自のアイデンティティを模索してほしいと願っている。
(J.I)