‘22年の秋 イスタンブールはもうコロナを忘れたかのように活気がありました。
バザール周辺はごった返し、モスクに入る観光客の列ではアゼルバイジャンやイスラエル など日本ではあまりお会いしない国の方々と言葉を交わしました。またボスポラス海峡を渡る船着き場も大勢の人があふれ、海産物のレストランが軒を連ねていました。
私は雑踏に疲れ、むしろ30㎞ほど先の黒海を見てみたいという思いにかられていました。その少し先500km600kmには黒海の真珠と言われるオデッサの町やクリミア半島があるのです… 戦争をしている国がある、すぐそこにあるんだよという戒めを自らに課したい衝動がありました。
アジア側への往来やショートコースの観光船はあるのですが、残念ながら一観光客が日帰りで黒海まで行って戻ってこられるような便は(その時点では)無く、私は前回のブログで書きました旧市街地に沈む美しい夕日を見た翌日、次の訪問国スペインに向う機上の人となりました。
離陸して間もなく、飛行機がなんだか寂しい景色の上を飛んでいることに気が付きました。青黒い海が右側眼下に広がっていたのです。高度はそんなに高くありませんでしたしお天気でしたから、船でも見えるかしらと目をこらしましたが何もない静かな景色でした。
黒海に面している国はトルコ・ブルガリア・ルーマニア・ウクライナ・ロシア・ジョージアです。そして黒海に近いのに海に出口を持たない小国モルドバはウクライナとルーマニアに挟まれる位置にあります。ぐるりっとに10年ほど前でしたでしょうか、そのモルドバという国から来た生徒がおりました。モルドバの言語はルーマニア語(ラテン語系の言語)で民族もルーマニアですが、彼は父方がロシア人だと言っていたのが耳に残っています。
(日本語の語彙のまだ少ない生徒が話すことには何か意味・主張があると思っています)
モルドバも侵略されたり分断されたり、弾圧を受けた歴史はウクライナと重なります。
「ソビエト連邦」の一部から独立したのも同じ1991年です。昔の事ではないのですね。
ロシアのウクライナ侵攻により、モルドバは人口比率からいって一番多くウクライナからの避難民を(家庭にも)受け入れています。隣国であり同じ苦汁を味わわせられた同志だからでしょうか…
黒海に注ぐ川にはドナウ川(ブルガリアとルーマニアの国境)やドニエプル川(ロシア~ベラルーシ~ウクライナ)という大河があり、肥沃な土地や美しい文化を生み出してきました。それなのに…長く複雑な歴史の中で繰り返されてきた侵略や破壊が、またも繰り返されていることはなんとやるせなく悲しいことでしょう。
(ET)