昨年の12月に宇治の源氏物語ミュージアムに行きました。以前から行きたかったのと、紫式部が主人公の来年の大河ドラマが始まったら混むに違いないと思ったからです。浮舟が身を投げた宇治川は寒々しく、御付きがいるとは言え薫も匂宮もよくここまで足を延したものだと、光源氏もそうですが足まめであることに間違いないと妙に感心してしまいました。
目的の源氏物語ミュージアムは人もまばらで、ゆっくりと見て回ることができました。源氏物語五十四帖、宇治十帖の内容が書かれている所では、一つ一つ読みながら登場人物を思い浮かべ、「若紫」の巻では幼い日の紫の上の可愛い声が聞こえてくるような、「若菜」の巻では学生時代の講義を思い出したりと、時間を気にすることなく物語の世界に浸れました。上映していたアニメや宇治十帖のダイジェスト版のような映画は、源氏物語紹介のようなものであまり楽しめませんでしたが。
企画展では源氏物語に関する江戸時代からの双六、絵や資料、与謝野晶子、田辺聖子、瀬戸内寂聴の現代語訳の原稿が展示されていました。「偐紫田舎源氏」のようなパロディ作品が生まれたりかるたがあったりと、人々の生活に浸透していたのが伺えます。
現代語訳を読むのも楽しみの一つです。林真理子訳には登場人物の気持ちがぐっと現代の私たちに近づいていながらも、朝もやの中を帰っていく光源氏が目に浮かぶような趣深さがあり、今読んでいる角田光代訳にはどんどんストーリーを追いたくなるようなリズムがあります。
かなり大胆なストーリーで有り得ないと思いながらも、源氏物語のエピソードが所々に入っている大河ドラマ「光る君へ」を私も毎週楽しみにしています。エピソードを見つけるのが面白くて、一人で悦に入っています。
読む年代、その時の心情によって好きな登場人物が変わるのも面白いところです。そして読む毎に、雨夜の品定めのように物語について興味ある方と語り合いたい気持ちが募ります。
(I.N)