現在担当している小学校低学年の中国人の男の子は、どうにも日本語の習得がスローペースです。
カードの単語を覚える、絵をQAを言う等の単元ごとの学習は繰り返しによってある程度まではできるようになるのですが、それが実生活の中ではなかなか反映されず、なかなか定着もしていないようです。
本人の中で「日本語」というのものがまだまだ身近に感じらるものになってはいないのではないか。
母国語の語彙もそれほど多くはない様子。小さい頃に絵本等に触れる機会が少なく、文字や音から語彙を得る機会が少なかったのではないか。…などなど。
先生同士で、原因は一体何なのか・どうしたら良い方向に持っていけるかの相談をしています。
授業の中では学校の国語の教科書を使用することがあるのですが、彼は描かれている絵や写真は大好きで、文字をそっちのけで自分の興味の引く世界を辿ります。(そしてなかなかその世界から戻らず…)
文字(日本語)がわからない…ということも勿論ですが、やはり絵が好きなのだろうなと。
中国語で物語を理解し、自分でも音読できるようになった絵本を、日本語でも同じように読んでみたらどうだろう。
その後、日本の絵本作家さんの絵本の中国語翻訳版を数冊お借りする機会を得ることができました。
ふくざわゆみこさんの優しく柔らかい絵柄の動物達の絵本でした。
図書館で借りてきたオリジナルの絵本と見比べると、絵柄やページの構成は同様でした。文章については、ちょっとした部分でセリフと説明文が前後する箇所がありますが、だいたいは同じように読むことができるようです。
絵本自体への食いつきは上々でした。
個性的な動物の表情や、文中の説明とリンクする絵柄の中にあるちょっとした発見等にも反応を示します。
私との授業の時は、私は日本語で物語を読み、日本語で質問を投げかけるのですが、それに対しての反応も良く、私の声(日本語)が以前よりも彼の耳に届きやすくなっているような感じを受けました。
絵本は子どもが覚えてしまうほどに同じものを繰り返し読んで聞かせるのが良いと聞きます。
借り物の絵本、限られた授業回数でどこまでできるかはわかりませんが、彼と日本語の距離を近づけ今の停滞を打開するきっかけとなれば良いと思っています。
(N)