授業後生徒に宿題(助数詞を覚える、読み物を読んで問いに答える等)を出しますが、最近九九算を覚えること等も出すことが多くなりました。子供たちに日本語を指導する最大の目的は、彼等が学校生活を楽しく、有意義に過ごすことができるためだと思っています。初級の日本語だけでは教科を理解するのは難しいですが、数字が基
本となる算数・数学は取り組みやすいと考えています。
六年前 五年生の男子N君が、全ての教科が理解できないのは日本語力が足りないからだと思った学校の先生の紹介で、ぐるりっと教室に来室してきました。ゆっくり話せば簡単な日常会話は出来ていました。私は週二回担当、「にほんごをまなぼう」とその副教材「にほんごワークブック」を使い日本語を指導しながら、算数の理解度を確かめて見ると基礎は習得していました。小学一年の時公文教室に通っていたそうです。そのせいか学校で学習しているところ(分数の計算)をちょっと説明すると分かってくれ、どんどん進めるようになりテストも80点以上取れるようになりました。
バングラディシュ出身の彼は漢字が苦手で、小学2年国語の教科書もたどたどしい読み方でした。平仮名・カタカナは読めましたから、学校で学習しているところを読ませると漢字にふり仮名をつけ一生懸命読んでいました(最初は二・三行)
学校では最初新しい課を学び始めると、先生が音読した後一斉に皆で音読、其のあと順番に一行か二行ずつ読まされたそうです。それができないことが彼にとって一番いやな時間だったようです。
ふり仮名をつけ音読を繰り返しているうち、五年・六年の教科書も何とか読めるようになりました。
皆と同じ行動がとれるようになると、自信がわいてきたようです。
ある日「先生、僕 議長に選ばれたよ」と嬉しそうに報告してくれました。六年の教科書も上手に読めるようになり、先生の話や授業の内容も理解できるようになると、20点以下だったテストも常時80点以上とれるようになりました。漢字の勉強も学校のドリルを使い、漢字の読み書きのテストをしてあげていましたが、彼も努力しだいぶ覚えたようです。
宮沢賢治作「やまなし」を学習(何度も音読)しているとき、先生が賢治はどんな人だったのか話してくださったらしく、私にいろいろなことを教えてくれるようになりました。
僕は算数より国語のほうが好きになったとも言ってました。低学年では音読が宿題になることがあるようですが、「音読の手助け」が出来ないという外国人の親の悩みを何度か聞いたことがあります。
現在私が担当している生徒たちの中には12歳以上なのですが、繰り上りのある足し算や繰り下がりのある引き算、九九算などができない子がいます。日本語の勉強をしながら、ちょっとの時間を見つけ、その練習をしていますが、なかなか定着しないのが悩みです。
母国では算数の基礎習得時間が短く分からないまま、来日してしまっているようです。
来日した外国人は日本語の習得が必要ですが、小・中学生の場合は、母国の算数の基礎が日本に比べて低い場合、その教科学習の補充も必要だと論じられているのを新聞で読みました。
私も微力ですが、日本語学習をしながら教科学習も取り入れていきたいと思っています。
(K・S)